逆転クオリアの概念が意味するものとは
逆転クオリアと呼ばれる概念がある。
例えばある人から見た赤は、実は他の人から見た青かもしれないというもの。
だがどちらの人物も"それ"を赤だと認識している。
結構シンプルな思考実験だが、これが持つ意味は深い。
なぜこれが難解な問題なのか早速説明しよう。
まずこの思考実験には二つの意味がある。
・技術的な問題
・宇宙の本質的な問題
技術的な問題というは、脳機能の違いによって起きる逆転クオリア現象である。(それが正式名称かは知らない)
有名な「ドレスの色」の写真を例にしてみる。
何色のドレスに見えるだろうか?
「青と黒」という声が多いが、「金と白」という声も存在する。(実際のドレスの色は青と黒)
要するにこれは目の錯覚の類である。(このような事が起きる詳細な理由を知りたい人は他で調べてください)
ただここで問題になるのは、逆転クオリアの問題は目の錯覚とは全く無関係であること。
たまにこの問題が同じような意味として捉えられたリしているが本質的な部分は全く違う。
それを説明する為に今から少しシミュレーション宇宙論の話を持ち出してみる。
この宇宙がコンピュータで出来ていると仮定すると、「赤」に該当する"コード"が存在するはずである。
仮にそれを"00006"とする。
そして「脳」に該当する複雑なコードも存在する。
仮にそれを"19378638724"とする。
そしてその二つが合わさることによって赤のクオリアが"そこ"に現れる。
しかし脳の機能は人によって違うので、同じ"人間の脳のコード"でもそこには違いがある。
"19378636954"だったり、"19378630001"という感じに。(この数字は喩えなので深い意味はありません)
それを感覚的に説明するとある人の脳は錯覚の影響を受けにくく、ある人の脳は錯覚の影響を受けやすい、という感じである。(他には色弱、色盲、盲目などの例もある)
この条件の違いによって"00006"が人によって赤に見えたり、青に見えたり、色として認識できなかったりすると考えることが出来る。
更に目の錯覚とは違う本当の意味での逆転クオリアが存在するかどうかの証明方法はないと言われたりもするが、(人から見た赤が自分と同じかどうかを確かめる方法)
シミュレーション宇宙論を考慮すると100%完全ではないが、これは存在することになる。
(詳細はこちら:シミュレーション仮説が意味する現実の正体とは)
だがシミュレーション仮説を考慮しても大きな謎が残る。
それは、なぜ"00006"と"19378638724"が組み合わさると「そのクオリア」に該当するのかである。
"00006"がなぜ「赤」なのかという部分はそういう設定だからで説明できる。
しかしそれは赤のクオリアが"それ"である理由にはならない。
つまり"00006"と"19378638724"の組み合わせが「こっちでいう青のクオリア」でも問題なかった可能性があるわけである。
(論理的にはどちらも同一と見なせる)
これが何を意味しているかというと、クオリアそのものは"論理"とは無関係である可能性があるということ。
いや全く無関係じゃない。意識(論理)との関係性はそこに確かにある。
しかし、"00006"と"19378638724"が組み合わさると「そのクオリア」に該当するという初期設定(?)はシミュレーション仮説を完全に支持していても解決できない。
なぜならそれは論理の枠を超えているように思えるから。なので設定と言えるかどうかすら怪しい。
ただし上のような条件が整った時に絶対に「赤のクオリア」が"それ"でなければならない理由が根底にあるのなら話は別だが、あるのだろうか?
きっと答えは永遠に謎のままだろう。
というわけで途中からシミュレーション仮説の話になったが、この問題はそれを考慮しないと深く掘り下げることができないからである。
(それ抜きだとそういう可能性もある、そしてこれは何を意味するのか? などで話が終わる)
シミュレーション仮説と聞くと意識も含む全てはコンピュータ(情報)で出来ていると思われがちだが、そう単純に考えれるものじゃない。
逆転クオリアの概念はそれを簡潔に教えてくれるものと言えるだろう。
ちなみにこの問題はシミュレーション仮説を完全に考慮するとまだ話を広げることができる。
それについてはデジタル物理学の哲学の応用編の項目をご覧ください。
ただこの問題は次のメアリーの部屋とも関連しているので先にこっちを見た方がいいかもしれない。