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ボルツマン脳パラドックス

日本ではほとんど知られていないがボルツマン脳パラドックスというものがある。

どのようなものか早速紹介しよう。



これはエントロピーと無秩序の誤解の話と関係しているのだが、その中で説明したように宇宙は低エントロピー状態から高エントロピー状態へ向かっている。

それを簡単に説明すると放っておいたら部屋は勝手に綺麗になるよりも一方的に汚くなっていく確率の方が圧倒的に高いである。

その事を宇宙に置き換えると宇宙はビッグバンに始まり、そして銀河や星々が生まれ生命体が誕生し、そして最終的に宇宙は終焉へと向かう

だがそれは確率的に起きやすいだけ絶対的な法則を意味していない。

つまり途方もない長い年月が経てば、終焉後の宇宙(高エントロピー状態)からまたビッグバン(低エントロピー状態)が発生する可能性があるわけである。

無限の時間が存在すればそういう意味で確率の低さというのは意味を成さなくなる。

不可能じゃない限り全ての可能性は起こりうる。

ではここで話を変えて食べ物のピザを作るのに必要な材料は何か分かるだろうか。

そのピザにもよるだろうがチーズ小麦その他のトッピングに必要な材料が必要になるだろう。

詳しいことはともかく、要するにそれらは動植物によって育まれる。

さらにそれらの材料を使ってピザを作る人も必要である。

そして人間も含めた動植物の存在は地球のような惑星が無ければ存在しない。

さらに太陽も必要で、その二つの距離も重要になってくる。

という風に突き詰めて考えていくと最終的にはビッグバンまで遡る。

ちなみにビッグバンがどのようにして発生したのかというのは現在のところ解明されていないが、

無のゆらぎから発生したというのを一度は聞いたことがあるかもしれないがそれはただの無数にある仮説の一つであるので科学的に証明された事実ではない。

(さらにその"無"は本当の意味での無ではないので宇宙を生み出す環境を持った"それ"がなぜそこにあるのかというのは結局のところ謎である)

ここで仮に混沌からビッグバンは発生したとする。

ただそうするとここで問題が発生する。

ピザが生まれるには先ほど説明した宇宙の進化の過程とも呼べる流れが必ず必要になると思える。

しかし実際はそのように条件は限定されていない。

というのも混沌からたまたまピザを構成する分子構造が発生すれば、その過程なしでピザが現れるからである。

※この部分は第六章で説明するスワンプマンの話と類似している

ただこの問題はスワンプマンと大きな違いがある。

それはビッグバンの発生に始まりピザを人が作り出す確率よりも、たまたまピザが生まれる確率の方が高い。(らしい)

それだけだと妙な話にしか思えないだろうがここでボルツマン脳の概念が姿を見せる。

現実というのはある存在の視点から見た形で存在している。

それが意識を通した形でしか存在しないという意味だと断定することはできないが、ただこの問題はその真偽ではなく、そこに行き着くまでの過程がどうなっているのかもある存在の視点から見た形で存在しているという部分。

要するにビッグバンによって宇宙が誕生し137億年を経て今この現実が存在するという考えも人の視点で存在している。

(教科書などで学んだ知識)

その宇宙誕生から現在までの流れを本当の意味で体感している者はいない。

つまりこの話はこういうことである。

一般的にイメージされる宇宙の進化によって"この現実"が存在する確率よりも、その過程なしでこの現実を認識している脳がたまたま現れる確率の方が高い

これがボルツマン脳パラドックスである。

つまり宇宙も今持っている記憶ついさっき誕生したということになる。

(しかも正確には宇宙が誕生したわけじゃなく意識経験を持った脳の誕生)

要するにこれは現代版の世界五分前仮説といえるものだろう。

ちなみにその確率の差がどのぐらいなのかといった具体的な話は専門家にお尋ねください。

※ここで紹介したボルツマン脳パラドックスはこの二つの解説を参考にしています

■参照(YouTube)

Boltzmann Brain Paradox

Are You a Boltzmann Brain? | Space Time

ではどうやったらこの問題を解消できるのか?

簡単にいうとその方法は存在していない

なぜならボルツマン脳として"我々"は存在していないという理論があったとしても、それ自体がボルツマン脳としての現実として含まれている可能性を消すことができないからである。

なのでこのような問題は「そんなばかな」と深く考えずに無視するか哲学的にどうにかして対処するかの二択しかない。

ただ無視するとそこで話が終わるのでここでその対処法を紹介しよう。



■宇宙は混沌から生まれていない

ビッグバンが発生する条件とボルツマン脳が生まれる条件が同じであると仮定すると先ほどのパラドックスが発生する。

なのでボルツマン脳が発生しない条件の環境下でビッグバンが発生したと仮定すれば定義上はボルツマン脳を消滅させることができる。

ただその環境下の具体的な説明が不足すると科学的にはもちろん哲学的な理論としてもその定義だけではやや中途半端である。

次の方法はもっと具体的である。

■シミュレーション仮説

これを支持しているから個人的にはこの問題の真偽には全く興味がない。

なぜシミュレーション仮説を支持するとボルツマン脳の可能性を消せるのか、それはビッグバンも含めた全ての宇宙のイベントは仮想上の出来事(イデア)として処理できるからである。

詳しくはこちらを参照:無限後退問題の解決方法

なのでボルツマン脳というコンセプトも、文字通りコンセプトとして処理できることになる。

"この現実"が存在する理由はビッグバンではなく上の層のシミュレーションが原因になるので上手く対処できるわけである。

※ただこの仮説自体がボルツマン脳的であるのでやや皮肉な解決法でもある。

他にも対処法は色々あり、例えば「突然現れた脳がなぜ時間の流れを感じ取れているのか?」(なぜすぐに消滅しないのか?)というもっともな指摘や、多元宇宙論エヴェレットの多世界解釈を正しいと仮定すればボルツマン脳の侵攻を食い止めれるなどという意見も見たことがある。

他には「そもそもボルツマン脳が生まれる確率の方が低い」というパラドックスそのものの存在否定もある。

まだ色々とあるだろうが、ここで問題にしたいのはボルツマン脳の真偽ではない。

問題にしたいのは、それについて考える人のアイディアである。

そもそもなぜこれはパラドックスと名が付いているのか?

一体何がパラドックスなのか?

どういう事かは次のボルツマン脳が抱える本当の問題へつづく。