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量子エンタングルメントの解釈を紹介

■前回

量子エンタングルメントについて(EPRパラドックスとベルの不等式の説明)

EPRパラドックスとベルの不等式の説明は終わったのでここからは量子エンタングルメントの解釈に話を移そう。

これには様々な解釈(予想)が存在している。

早速紹介しよう。



■関係を持った粒子の間で「超光速」の情報のやり取りが行われている

量子エンタングルメントが存在するならこれは一番あり得そうに思えるが、一番あり得ないかもしれない

というのもエンタングルメントによる距離を無視した瞬時の作用は古典的な情報の移動ではないからである。

不確定の状態から「観測結果」を観測者が決めれない以上それはランダムな情報でしかない。

実験後に互いの観測データを比較してそこで初めてエンタングルメントの効果を確認できるので比較なしでエンタングルメントの作用を使い観測者の望む情報は送る事は出来ない。

エンタングルメントを利用した量子テレポーテーションも肝心の「伝えたい情報」は結局普通の連絡手段で相手側に送らないといけない条件がある。

つまり相対性理論(局所性)に反する空間を伝わった形で超光速のやり取りが行われているのは考えにくいわけである。

では一体どうすれば相対性理論に反さずに量子エンタングルメントの非局所性(超光速に見える現象)を説明できるのか?

そこで次の仮説が出てくる。

■ワームホールが関係している説

ワームホールといえばSFでお馴染みの概念だが、それがエンタングルメントの作用と関係しているのではないかという説がある。

関係してるというか、スケールが違うだけで同じ性質ではないかとその仮説を唱えた科学者は言っている。

参照:「ワームホール」と「量子もつれ」に兄弟説 (外部リンク)

当然これは仮説なので本当なのかは不明だが、量子エンタングルメントが実際に存在しその作用は通常の空間を伝わってないとすればこのような高次元的な概念が必要になるのは納得できる。

そしてこれはコペンハーゲン解釈が正しい場合の理論になるのかもしれない。

というのもコペンハーゲン解釈は波動関数の収縮の時と同じくこの現象に対しての説明は一切存在していないので気味の悪い遠隔作用の部分に関しては必ず別の理論が必要になる。(ただしそれがこのワームホール理論とは限らない)

ちなみにエヴェレットの多世界解釈だとワームホールのような理論は必要なく単独で説明できる。



■多世界解釈が正しい説

この解釈が正しくとも気味の悪い遠隔作用は存在するように思えるがどうやら存在しない事になるようである。(Wikipedia)

この理論では多世界としてそれぞれ違う結果が分裂するのでこっちが上向きの場合でももう片方も上向きになる可能性は普通にある。(ただし観測者から見たら別次元の出来事として)

だから自分が目撃した結果と反対になってるかどうかは通常の光速以下の通信で判断する必要がある。

その時初めて観測者から見て関係性が判明する。

つまり様々な結果がそれぞれの多世界の結果と対応しているので気味の悪い遠隔作用の概念抜きでこのエンタングルメントを説明できるようである。

何だか煙に巻かれた気もするがとにかくこの解釈だと局所性が守られるのでコペンハーゲン解釈ほどその点で面倒にはならない。

この理論には宇宙の波動関数(Universal wavefunction)というコペンハーゲン解釈には存在しない概念があるので、おそらく宇宙全体のシステムと連動して世界がその結果に合わせて分裂するので非局所性には当たらないのだろう。

(コペンハーゲン解釈ではエンタングルメントが宇宙全体と連動する必要はないので粒子間のみでの瞬時の繋がりの理由を考える必要がある)

ただしワームホールのような相対性理論に反さない形の非局所性を説明する理論は必要ないが代わりに多世界との繋がりを説明する理論がこの解釈の証明には必要なので量子エンタングルメントの存在がエヴェレットの多世界解釈を後押ししているわけではない。

しかしコペンハーゲン解釈よりは気味の悪い部分と向き合ってるのは確かである。

■ボーム解釈が正しい説

非局所的な隠れた変数理論が否定されていない以上この可能性はありえる。

ただし隠れた変数と言っても局所的な場合と全く違いこの場合もエヴェレットの多世界解釈のように宇宙の波動関数の概念が必要になる。(ただ意味は異なる)

専門的な事は分からないがそれぞれの粒子ではなく宇宙に広がっている波動関数(ガイド波)が気味の悪い遠隔作用を引き起こしている。

粒子はガイド波に基づいて動いているだけなので粒子(物体)が何かを引き起こしているわけじゃない。

なので相対性理論と矛盾しないようである。

つまりイメージ的には宇宙に存在する波が一体となって「量子力学的現象」をコントロールしているという感じだと思われる。

多世界解釈と似ているが、しかしこの場合説明に必要な宇宙の数は1つで済むのでそれが利点である。(ただしそれによって非局所性が必要になる)

という具合に例に出さなかったのも含めれば解釈は色々と存在する。

どれが正しいかは不明だが、しかしベルの不等式の破れがある以上それを説明するのに日常には存在しない何らかの奇妙な概念が必要なのは確かだと思われる。

では基本を押さえたところで量子力学の解釈の更なる詳細を取り上げる。

最初はエヴェレットの多世界解釈から。

次の第三章へつづく。


■第三章

「エヴェレットの多世界解釈」の利点と問題点