宇宙の謎を哲学的に深く考察しているサイト

量子力学との関係

■前回

「水槽の脳シミュレーション」に関する補足

永遠の水槽の脳シミュレーション仮説が正しいと仮定すると、量子力学の扱いはどうなるのか?

どの解釈が正しいことになる?

ただその前に基本を押さえておこう。



もしシミュレーション仮説が事実だと仮定すれば物質であるはずのミクロの物体がなぜ観測されていない時は波動関数のような抽象的な概念として存在できるのか説明できる。

やはりこれは近年有力視されているように情報で構成されているという理由だろう。

ただここで問題になるのは、情報の数に制限があるのかどうかである。

宇宙(現実)というのは情報(数学)として表現可能なだけではなく本当に情報で構成されているのであればそのパターン数を限定する必要はない。

もし無限にあるとすれば並行宇宙どころか多元宇宙どころか、マックス・テグマークが提唱した数学的宇宙仮説、つまり究極集合がそれを意味していると考えることができる。

ただしマックス・テグマークは究極集合を現実として存在していると考えているのでこの理論が意味するものとは違う。

(テグマークの主張だと数学は実在するというマテリアリズム的なもの)

だがこの理論はソリプシズムであるので、この場合の究極集合の意味は、意識の主が今後体験する可能性のある現実ということになる。

可能性の現実として無限の経験が意識の主の潜在意識の中に広がっている感じである。

まるで意識解釈の理論とそっくりだが、しかし前にも言ったがこれは量子力学の解釈として考えているわけじゃなくデジタル物理学の哲学として考えているから意味が違う。(大きな違いはシミュレーションの概念の有無

話を戻して、しかし全てを体験するのは不可能だと思う上に理由がないとも思うので究極集合の概念は永遠に満たされないだろう。

つまりそれは究極集合ではなく究極集合もどきという事になる。(そしてその"形"は永遠に知ることが出来ない)

ただここで問題になるのは情報の数に制限がないのであれば、量子力学の解釈に決まった答えはないと考えれる点である。

どれも論理的に成り立つのであれば論理的なイデアとしてその究極集合もどきの中に入っている可能性があるわけである。

ボーム解釈が正しい"設定"の世界もありえると同時に、多世界解釈が正しい"設定"の世界(並行宇宙の存在が確認された世界)もありえる。

さらに原理的にどの量子力学の解釈が正しいのか解き明かすのが不可能というケースも考えられる。

実際、多世界の存在が確認されてもそれがエヴェレットの多世界解釈を意味するのか、それとも多意識解釈を意味するのか、それともこのサイトでは取り扱っていない多世界系の解釈であるConsistent historiesを意味するのか、など様々なパターンが考えられる。

つまり"これ"が量子力学というものなのかもしれない。(これとは数式上の量子力学のこと)

ただ突き詰めて考えるとこれは意識解釈とは違う意味での意識解釈ともいえる。

潜在意識解釈、もしくは情報解釈とでもいうか。

つまり量子力学には3つの意識解釈が存在する。(このサイトで取り上げている意識解釈の数)

誤解による意識解釈(誤解によるものなので間違い)

意識解釈(デジタル物理学の概念が含まれていないので不完全)

潜在意識解釈(正確にはデジタル物理学の解釈であるので特定の量子力学の解釈を意味しない)



そしてさらに話を広げると、量子力学すら設定として存在する可能性も出てくる。

実際この理論が正しいと究極的にはそういう事なのだが、しかしその事を現実として体験できる可能性もある。

それは古典的な物理法則しか存在しない世界で作られたシミュレーション宇宙という感じの場合である。

※ただし量子力学なしではこのようなテクノロジー(というかこのような進化の宇宙)は存在していないと言われているので、その条件に当てはまるのは量子力学なしでこのような発展が可能な宇宙でなければならない(イデアとして考えた場合)

古典的な物理法則しか存在しない世界でもその世界に住む科学者が「量子力学のようなシステムが存在する宇宙がこの宇宙の外にあるかもしれない」と考え、数式だけの存在とはいえその宇宙に量子力学が発生する可能性がある。

そしてそれを元に量子力学が存在する宇宙に住む住人の人生を創り、それを今、古典的な宇宙に住む住人が入り込んで経験しているというパターンが考えられるわけである。

実際のところそれはないとは思うが、しかし可能性としてはある。

水槽の脳シミュレーションはコンピュータ上で本当に宇宙全体を再現する必要もなければミクロの世界(量子力学)を完璧に再現する必要もないので古典的な宇宙でもそのような事が可能なわけである。

さらにその量子力学を思いついた古典的な宇宙のシステムは魔法の世界に住む天才哲学者が思いつき、魔法の力でコンピュータのようなものを作ってその水槽の脳の連鎖の中に入っている事も考えられる。

妙な話に聞こえるだろうが水槽の脳シミュレーションが意味する「宇宙」というのは全て意識が感じ取る錯覚、つまり不完全なものであるので完璧な宇宙こそが現実には存在していない。(完璧な宇宙の概念はイデアとしてしか存在しない)

ただし何でもありと言ってもそれは「論理」で制御されているので混沌は意味していない。

不完全であろうと非論理的であろうとそれらの経験する世界は必ず「論理」の制御下にある。

今のを図にするとこうなる。(ややこしくなるだけな気もするが一応出しておく)

前回の図と似ているがこれは"現在"に絞らず"未来"まで含まれた形である。

よって二層目は現在の意識の主の未来を意味し、水槽の脳のシステム(情報)は論理として神の頭脳の中に統合されている。

ただここで疑問が浮かぶ。

そもそも、「論理」とは何なのか?

それが全ての鍵な気もするが、それについてはまだ置いておこう。

というわけでここまででこの理論のシステムの80%はカバー出来たと思うが、しかし上の層のコンピュータの故障による現実の崩壊がなぜ起きないのかという部分を明確に説明していないのでまだ完全には押さえていない。

それに今までの話だとこの理論が決定論確率論かそれとも自由意志の存在を意味するのかなどはっきりしていない。

さらに倫理的な問題と絡んだ人生についての哲学的問題も存在している。

次の第四章へつづく。

■第四章

シミュレーション仮説に潜む倫理的問題?